あるところにヒヨコがいました。 卵の殻から出てきたばかりのヒヨコは、外の世界の広さにただただ驚きました。 今まで殻の中しか知らなかったヒヨコは、好奇心のままに外の世界を見て聞いて感じていきました。 そうしているうちに、ヒヨコはだんだん怖くなってきました。 外の世界は自由で奔放で、いろいろなものが溢れています。 それらのものが、それらを内包している世界が、突然恐ろしくみえてきたのです。 殻に帰りたい、ヒヨコは強くそう願うようになりました。 ヒヨコが殻に帰っても、世界は何一つとして変わらない。 世界はどこからかヒヨコの代わりを見つけてくるから。 それに気付いたからヒヨコは、怖くなったのです。 いてもいなくても変わらない存在であること。 それは死の恐怖よりも、ヒヨコにとっては脅威だったのです。 |