秋空と空き缶と飽きられた僕


理由もなくただいらつく時がある。
夏の気配が息をひそめはじめた頃の涼しげで雄大な秋空さえ、癇にさわるような。
僕は目の前に転がっていた空き缶を、激情のままに、秋空に向けて蹴飛ばした。

あえて理由をこじつけようとするなら、それはきっととても素晴らしいはずの世界をつまらなく感じてしまう僕に対する憤り。
そう、何が楽しいのかなんてとうの昔に忘れてしまったんだ。

きっと僕は飽きられた存在。
世界の全てから、統べる神から。
だから、美しいものを見る目を、心地よいものを聞く耳を、溢れ出るほどの愛を感じる心を、なくしてしまったんだ。

さようなら世界よ。
寂しさと憤りと虚しさのやり場のない飽きられた僕は、蹴られて飛んだ空き缶を追いかけて、秋空の下、理性の柵を翔び越えた。





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