6.もて耐4時間決勝
07.08.18

           



前日の練習走行でボロボロになったNSR500Vですが、とりあえず走行出来る状態にはなりました。
しかし何周もつか全くわかりません。

おまけに雨男がいっぱいいるので前日は雨!!
ウエット宣言が出されたので、後方排気さんから借りたレインタイヤを装着します。
ウエットなののでスタートはルマン式ではなく、ローリングスタートで始まるとの通知も出ました。


うちらは少しでも決勝で周回数をかせぐために、決勝前のフリー走行はキャンセルしました。
その後スタート前のサインティングラップもキャンセルします(これは全車両走行義務がありますが…(^_^;)

他の車両はみんなピットから出て走行しています。
そうこうしてる内にサインティングラップも終わりました。やっとエンジンをかけてスターティンググリッドに向かいます。

「なんとかスタートだけはもってくれ〜〜」

そんなみんなの思いを背負いながら弟はグリッドにつきます。

グリッドにつき、スタートを待ちます。
この時間はピットクルーやレースクイーン、ヘルパーもみんな集まってプレスの人が写真を取ったり、
わいわいがやがやしています。



アナウンサーのチームの紹介も終わりいよいよスタートが迫ってきます。





先頭にペースカーが走りだしその後を順番についていきます。
なんとか走りだし、3、4コーナーを曲がりコース裏へと走って行きます。
その後先頭車両がメインストレートを走ってくれば、そのままレースはスタートします。

しかし、ペースカーはピットに入らない模様。台数が多いのと2つのグループに分けているので、
うまく整列が出来なかったのか??

ペースカーがストレートを走ってきました。まだスタートではありません。

「え〜〜!!もう1周かよ!?壊れちゃうがや〜〜!!WW」





乗っている弟も恐らくそんな事を思いながら2周目に入ります。

スタートはしてくれ〜!!
再びコースの裏に消えていきました。


少したつと
「第1グループのペースカーの回転灯が消えました!」
とアナウンサーの声。

いよいよスタートです。

第1グループの先頭からアクセル全開で最終コーナーを立ち上げってきます。
さすがこの辺のマシンは早い!!先頭車両がフィニッシュラインを通過し、
レーススタート!!
ものすごい勢いで走っていきます。

それから少したつと第2グループも来ました!!

「おるか?あいつおるか!?」
「まだか?まだか?」

「おっ!!なんか白い煙りだ!!WW」
来ました!スタートは出来るようだ!調子の悪いNSR500Vですが、
目一杯アクセルを開けてストレートを駆け抜けて行きました。

「スタート出来たな…」
「良かった〜〜」

3コーナー4コーナーを走って行くのを確認し、ピットの方に戻ります。


しかしその直後、まだ1周目です。

「ゼッケン91番!!5コーナーでストップ〜!!」

アナウンサーの声が聞こえてきます。
「……駄目か……。」

走行できる状態ではないみたいで、どうやらコース脇に止めた様子です。

エンジンか…ケースが割れたか…?。

トラックに乗せられて車検場まで運ばれてきます。
そこからピットロードを押して弟が戻ってきました。





「ギヤが入らない!!全部ニュートラルだ!!」

マシンを見るとドライブシャフトのプレートが外れてる!!ボルトが緩みプレートも外れています。
予選で壊れたプレートを強度アップしましたが、本番でも壊れてしまいます。
しかし、これはボルトを締め付ければいけそうです。


しかしその後
「全然走らない!!」
また弟が言います。
またか…。よく見ると、左エンジンのプラグが緩んでます。
うそだ〜!昨日ワイヤーロックしたのにもう駄目なの!?

またカウルとタンクを外し、プレートを修理します。
クランクケースのクラックは昨日とほぼ同じくらい。エンジンはまだもちそうだ…。

天候を見ると雨はほぼ止んでいます。レインからドライに変えるチームもちらほら。

「ついでにタイヤも変えよう!!」

プレートも修復し、プラグのワイヤーロックも終え、タイヤも交換します。

よし!!走れる!!
次はAKITOさんにライダー交代します。





本調子ではないNSR500Vですがまだ走れる!
カルロス・サンダーのメットがピットアウトしていきます。

うちらはスタート前のサインティングラップを走らなかったので、
ペナルティーとなりピットストップ20秒を消化しなければなりません。

AKITOさんがピットアウトするともてぎのカメラはずっと追っていきます。

おぉ〜〜!!おいしい!!誰かビデオビデオ!!裏のS字からヘアピン。バックストレートまでずっと追っています。
でもピットのテレビをビデオで録っても光ってしまい、うまく撮れません(^_^;)

そのままピットに入りペナルティーの20秒を消化するためにピット出口までいき消化します。

そして2周目にピットイン。
「やっぱり回転が上がらない!」

もうギリギリの所まで来ている感じです。
「走れるうちに走っておいた方がいいよ」
と言う事で次は僕が行きます。

この日のためにペイントしたガードナーメットをかぶり、ピットアウトします。


1コーナーを曲がりアクセルを開けてもやはり回転が上がりません。
後ろを気にしながら邪魔をしない様に走行します。
たまに回転が上がる時もあるけど、なんだか不安定です。
そのまま130Rを抜けS字に入るとまたひどくなってきます。
V字の立ち上がりで一度吹き返し、ヘアピンではまた駄目です。





「もう1周は無理だ…」
そしてピットに戻ります。

「駄目だ!回転が上がらん!」

ピットでエンジンをかけ、様子を見ます。すると、1気筒がまた爆発していません。
またか!?ピックアップか!?プラグか!?


またまたカウルとタンクを外します。これまでにも何回外した事かWW

とにかく原因を探るために色々試します。一番怪しいピックアップを見ても昨日ほど悪くない。
隙間が多少狭いようなので調整します。

しかし火が飛ばない!ピックアップを何度調整しても飛びません!
CDIか!?イグニッションコイルか?また配線を仮につないで試すと飛びます。
イグニッションコイルは大丈夫そうだ。

何度かキックしているとなんだかすごく小さな火花が飛んでいる事が判明。
なんだ?発電か?
ジェネレーターか??
また配線を変えます。ジェネレーターからの配線を生きているのと、死んでいるのと交換してみます。
この辺の作業も弟です。頭の中に配線図が入っているので、さすがです。
少ない時間で要領よく変えて行きます。

配線をつなぎキックしてみると、ちゃんと火花が出ている!!

これか〜!ジェネレーターだったのか〜。とりあえず原因がわかりました。





このジェネレーターコイルはフライホイールの筒の中にあるコイルです。
フライホイールが回転する事により発電し、火花を飛ばします。
コイルは金具をかしめて固定してあり、ボルトは一切使っていません。

一番最初にジェネレーターを2個付けた時は大丈夫でしたが、最近はガタが出てきているのは知っていました。
だんだんひどくなっていました。
さらに昨日よりもガタガタになっています。

これも振動による物でした。

フライホイールの中に入ればいいだけだから多少のガタくらい大丈夫だろう…そう安易に考えていたのでノーマークでした。
しかし固定しようとしても、かしめてあるのでどうしようもない所です。


このジェネレーターだと言う原因がわかった時にみんなの手が止まりました。

ジェネレーターを直すのは不可能です。


ここで一番最初にエンジンがかかった時の事を思い出します。あの時もジェネレーターは1個でした。
エンジンのかかりは悪いけど、なんとかかかるはず。エンジンが途中で止まったりしたけど、
アクセルを吹かしておけば大丈夫だったはずだ。

ならその時の状態にしよう!!
1個のジェネレーターから配線を分岐して2個のCDIに繋ぎます。

弟が配線を終え、エンジンがかかるか試してみます。
確かアクセル全開じゃないとかからなかったな…
しかも思い切りキックをしないとかからなかったはず…。
それを頭の中に入れ、気合いを入れてキックする事2発。

「ブァァァ〜〜〜ン!!」

かかった!!しかも2発爆発してる!!
隣で見守っていた後方排気さんのチームから拍手がなりました。

「よし!!行けるぞ!!」


また4人でカウルを組み付けます。

時間は残り1時間。スタートしてから3時間経過しています。

再びメットをかぶりアクセルを吹かしながらピットアウト!!
行くぞ〜!!

…しかし!!ピットロードの途中でいきなりエンジンがストップ!!

「なんだ!?」

オフィシャルの人とピットまで押して帰ります。

「ガス欠みたいに急に止まった!!」

よく見てみるとガソリンコックがOFFでした!!

「ぎゃはははは〜〜!!まじ〜〜!?」

コックをONにして再びキック!これエンジンかけるの大変なんだから〜とか思いながら思い切りキック!

よし!!今度こそ!!

ようやくピットアウト出来るぞ!

しかし走り出してまた同じ所でエンジンストップ!!

…また押して帰ってきます。

「まただ!!さっきと同じ!!」

どうやら1個のジェネレーターで2個のCDIを動かすには電力が途中で足らなくなる感じです。


駄目か…。


壊れたジェネレーターでも少しは発電するかも知れない。それを補助的に繋いでみよう!!

またまた配線をいじくります。仮に繋ぎエンジンをかけます。
しばらくその場でエンジンをかけて止まらなければ大丈夫だが…。

30秒くらいしたらプスッ…。

ダメか…。


またみんなの手が止まりました。

もう手がないか…。

しばらくの沈黙の後
でもまてよ!?さっき走行してた時も1気筒だったり2気筒だったりしてたはずだ。じゃ〜1気筒で走行してみるか!!

また配線をいじくります。左エンジンのジェネレーターからの配線を死んでいる右エンジンのCDIに繋ぎます。

これでエンジンかかるか?

キックしてみると
すんなりかかりました。

「これしかないな!!」

しかしこの方法は本当に悔しい方法でした。2気筒繋げた意味が全くありません。
最初から1気筒の方が…。
しかし走行するにはこの方法しか残っていません。





再び走行出来る準備をしてメットをかぶります。

「行けるとこまで行っちゃって!!」
そう弟が言います。
コクッとうなずき再びピットロードを出ます。

後ろを気にしながら1コーナーを曲がり2コーナーの立ち上がり。アクセルを全開にします。
途中で息つく所はあるものの回転は上がっていきます。左エンジンは殺してあるので振動が大分少なくなっています。
3コーナーを大回りで曲がり90度コーナー。
曲がりません!!!WW

途中でアクセルを開けるとマシンはどんどんコースのアウトの方向を向いてしまいます。
「なんだこれ?だはは〜」

もう笑うしかありません。

当然スピードは遅く他のマシンはどんどん抜いていきます。

そして裏のストレート。
あっ!!ゼッケン89!後方排気だ!
普通に抜かれていきます。
後方排気さんたちは順調に走行しているようです。
「いいな〜」
普通にうらやましかったですW

そんな遅いペースですが、まだNSR500Vは動いています。
もうひたすら走るしかないと思いながら走行していると、どこかのコーナーの立ち上がりで
体重を真ん中に移動しようとしたら右足がツルッと滑ります。
あれ?

変なとこに足を乗せてるか?
確認してもちゃんとステップに足は乗っています。
そうこうしているうちに次のコーナー。
ツルッ!!

あれ〜!?
右足が落ちました
ステップをよく見ると何故か濡れています。排気漏れか?
これでは危ないのでピットインします。


「右のステップがツルツルだ〜!!」

弟が見るとチャンバーにステーを溶接してある所が完全に取れてパッカリと穴が開いています。
そこから生ガスが漏れてステップを直撃していました。
他にもサイレンサーを見るとリベットで止めてある所がもげている…。中のグラスウールが見えています…。

ボロボロだ…。

振動はどこまでマシンを壊すんだ!?


時間は残り30分。

とにかく作業をします。
チャンバーは液体ガスケットをたっぷり塗り、アルミ板を巻きワイヤリングします。
サイレンサーは同じく液体ガスケットとワイヤリング。さらにバンドで固定しました。

なんとか出来た!!
あと10分!!

最後は弟が乗ります。
あと2、3周でゴールだ!!

もうすでに限界のNSR500Vに乗ってゴールを目指し弟はピットアウトしていきました。


とにかくチェッカーだけは受けたい!!
そんな思いで必死でした。

あと3分。
弟がメインストレートを走っていきます。


去年の9月にこのマシンを作ると決めた弟。しかもパラレルではなく、あえて難しい90度Vにすると決めた弟。

点火で悩み、クラッチで諦めかけた時もあった。振動は出来る限り少なくしたはずだ。
1年のほとんどをもて耐に使い、万全の体制で挑んだはずだった…。

結果的にボロボロになり、みんなで必死に直し、最後には1気筒の走行となってしまったNSR500V。

そのマシンに乗って最後の1周を弟はどんな気持ちで走っているのだろう…??





その時の弟の気持ち
「え〜〜!?もうチェッカーだと思ったのに!まだ1周あるのかよ!?もうガス欠寸前なんだよ!!」



そしてスタートから4時間経過。
トップが順調にヘアピンを立ち上がりバックストレートに。
ピットにはメカニックやヘルパー、応援しに来た人が集まってきた!

そして立体交差をくぐり最終コーナーを立ち上がる!右手を上げながらストレートを走っていき、

チェッカーフラッグ〜〜!!!


次から次へとゴールしていきピットでは拍手が鳴りやまない。

あいつは!?まだか!?
まだか??

あっ!!来た!!ゼッケン91!!
行け!行け〜!!行け〜〜!!!!
弟は左手を上げてピット前を通り過ぎ無事にチェッカー!!!!





やった〜!!結果はとにかくゴール出来た!頑張って直してよかった!しかもよく最後までもってくれた!!

感激です。

チェッカーを受けたマシンはウィニングランと言って、トップが旗を持ち、その後ろをマシンが連なってゆっくり1周します。
オフィシャルも旗をゴールしたマシンに目一杯振ってくれます。
この1周は最高です。





去年はこの1周が走れなかったので今年は気持ち良く弟も走ってるはずです。

かなりスローペースで走りペースカーに続き、ようやくトップが帰ってきます。


トップから順番に最終コーナーを曲がりスタートラインに向かいます。

どこだどこだ!?
ビデオの画面ではよくわからないので自分の目で探します。

あれ?通り過ぎたか!?
いや…いないぞ??
ヘルパーと目を合わし
「いないよね!?」
「うん!!」

なんだ〜?どうしたんだ〜?
もう最後尾は通り過ぎています。
少したつとトラックが1台きました。でも単車は乗っていません。

なんだ〜 もっと後で運ばるな〜これは…。
他のチームはライダーやまないメカニック、ヘルパーが集まり賑やかにやっています。
ちくしょ〜〜。

しかしその後またトラックが1台きました。

「あっ!!乗ってる乗ってる!!」





トラックに運ばれてきました。思い切り手を振ります。弟も気がつきチームのみんなに手を振って合図します。
トラックはそのまますでにマシンが置いてある所まで行きます。
一段落着いていた他のチームはなんだ?何が来ただ?って気がつき全然知らない人も拍手をして迎えてくれました。


「逆にあの方が目立ってカッコイイじゃんか!!」
「ぎゃはは〜〜」


その後もてぎからシャンパンファイトをやりますとの事。全チーム分あるらしいので、みんな駆け寄りシャンパンをかけ合います。
「オ〜〜リャ!!」





うちらは出遅れてしまい、もうほとんど終わっていましたが、遠慮無しに騒ぎます。


とにかくチェッカーが出来て良かった〜〜!!最高だ!!


この後BGが来て写真を撮ってくれました。話しも少ししたので、来月のBGには少しでも載ると思います。

             














という事で2007もて耐は終了しました。この4時間、またここまでの1年は全力で戦ってきたと思います。
だから達成感、満足感はあります。

でもやはり悔しい!!
と言うのが正直な気持ちです(^_^;)


また次回、いつかはわかりませんが、挑戦したいと思います。(^0^)/

応援してくれた皆さん どうもありがとうございました。

                                                                                                                           Reporto By Nobu
                                                                                                     画像は河辺さん & VTR & デジカメ