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 遺言・相続Q&A

遺言や、相続に関して身近な問題となった時に、さてこの事はどんな意味なのか?
この場合はどうするのか?
などなど、戸惑うケースがよく見受けられます。
 そんなときの参考になればと、次のような基礎的な用語等の説明をしてみました。
何かお役にたてれば幸いです。

遺言できる人 法定相続人 遺留分 死因贈与契約
法定相続分 公正証書遺言 負担付遺贈 子の認知
相続人の欠格 特別受益 寄与分 特別代理人
法定相続と遺言 相続放棄 遺留分減殺請求 遺産分割

1.遺言できる人はどういう人

  ①遺言をすることができる年齢
    民法961条により満15歳に達した者は、遺言をすることができる、となっています。
  ②遺言者の遺言能力
    民法963条により遺言者は遺言をする時においてその能力を有しなければならない、
    となっています。
    遺言をするには、物事に対する一応の判断力、すなわち意思能力が必要です。これは、
    成年後見人であっても、物事の判断能力を一時回復したときは、医師二人以上の
    立ち合いにより作られた遺言は有効となります。
  

2.法定相続人とはどういう人か

  ①法定相続人とは
    法定相続人とは、被相続人が死亡した場合における、民法で定められた承継人の
    ことを言います。
  ②法定相続人の範囲と順位
    第1順位:被相続人の子。実子、養子とも同順位
         *第1順位が相続すれば、第2順位以下は相続人になれない
    第2順位:被相続人の直系尊属。
         *ただし、親等の異なる人の間では、その近い人が先になる
         *第2順位が相続すれば、第3順位は相続人になれない
    第3順位:被相続人の兄弟姉妹
  ③被相続人の配偶者は、常に相続人となる
         *ただし、内縁の妻は法律上配偶者ではないので、相続人の資格はない  
                                                   

3.遺留分とはどういうものか

  ①遺留分とは、一定の相続人が相続に際して法律上取得することを保障されている
    相続財産の一定割合のこと
   *遺留分を受けることできない人は、法定相続人の中で第3順位の兄弟姉妹
    (民法1028条)
  ②遺留分の割合
    直系尊属のみが相続人の場合は遺産の3分の1
    その他の場合は遺産の2分の1
   *遺留分を算定する基礎となる財産は、被相続人が相続の時に有していた財産の価額に
     贈与の価額を加算し、債務の全額を控除した額(民法1029条1項)  
                                               

4.死因贈与契約と遺贈の違いは何か

  ①死因贈与契約は、財産を送る人(贈与者)と財産を受ける人(受贈者)の双方が、贈与者
    が死亡した時に、財産が贈与者から受贈者に移転することを約束(合意)して成立する契約
  ②遺贈は、遺言者が死亡した時に、財産が遺言者から財産を受ける人(受遺車)に移転する
    ことを遺言者自ら決めてする単独行為
  

5.法定相続分とはどういうものか

  ①法定相続分とは、遺言で配分指定がない場合における相続人が承継する財産(遺産)全体
   に対する民法で定められている割合のこと(民法900条)
  ②相続人が配偶者と子の場合:それぞれ2分の1
   相続人が配偶者と直系尊属の場合:配偶者3分の2、直系尊属3分の1
   相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合:配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1
   *同一グループの各人の相続分は均等が原則、ただし非嫡出子は嫡出子のの2分の1
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6.公正証書遺言とはどういうものか

  ①公正証書遺言とは、公証人が作成する公正証書によってする遺言のこと
  ②公正証書遺言の手順
   二人以上の証人の立ち合い→遺言の趣旨の口授→公証人の筆記、読み聞かせ、
   閲覧→筆記内容の承認、署名  

7.負担付遺贈とはどういうことか

  ①負担追贈とは、受遺者に対して一定の義務を負わせる旨の申し入れのある遺贈のこと
   (民法1002条)
  ②負担付受遺者は、遺贈を承認すれば遺贈の目的財産を取得するとともに、遺贈の目的の
   価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行しなければならない。
   (民法1002条1項) 

8.子の認知は決めておけるか

  ①遺言による子の認知は可能です。
  ②遺言による認知は、遺言者の死亡と同時に遺言の効力を生じ、遺言執行者が遺言書の
    謄本を(成年の子の認知の時はその承諾書)を添付して、市区町村長に認知の届け出を
    しなければならない
  ③遺言による認知は、遺言されたときに認知が成立し、遺言者の死亡の時に認知の効力
   (法律上の親子関係)が生ずる
                                              

9.相続人の欠格とはどのようなことか

  ①相続人の欠格とは、民法891条に定める欠格事由に該当する違法行為があった人について、
   不正な行為があった時から当然に、被相続人との関係で相続権を失わせる制度
  ②相続人の欠格事由
   :故意に被相続人または相続について先順位若しくは同順位にある人を死亡させ、または
    死亡させようとしたために刑に処せられた人
   :被相続人が殺害されたことを知ってこれを告発せず、または告訴しなかった人。ただし、
    その人に是非の弁別がないとき、または殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であった
    時を除く
   :詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、または
    これを変更することを妨げた人
   :詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、
    またはこれを変更させた人
   :相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した人

10.生前に被相続人から贈与を受けていた相続人の相続分

   ①特別受益とは:共同相続人間の平等を図るため、相続人に対して遺贈及び一定の
     生前贈与といった財産分与とみられるものがなされている場合に、その遺贈等を
     「特別受益」と呼ぶ
   ②特別受益の範囲:「遺贈」又は「婚姻、養子縁組の手為の贈与」もしくは
     「生計の資本としての贈与」
   ③生前に贈与を受けていた相続人がある場合の相続財産:
    特別受益者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額に
    特別受益の価額を加えたものが、その相続財産とみなされる(民法903条1項)
      
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11.寄与者の相続分はどのようになるか

   ①寄与分とは:共同相続人中に被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与を
    したものがある場合に、他の相続人との間の実質的な公平を図るため、その寄与相続人に
    対して相続分以上の財産を取得させる制度
   ②寄与分を主張するための要件:
    特別な寄与行為の存在、寄与行為と被相続人の財産の維持又は増加との間に
    因果関係がある など
   ③寄与者の相続分:寄与者の相続分は、相続財産から寄与分を控除した見做し
    相続財産について、相続分の割合により計算した額に当該寄与分を加算した額となる
  

12.未成年の子が数人いる場合の遺産分割協議

   ①親権者とその未成年の子がともに相続人となった場合、両者は利益相反関係になるため、
    親権者は子の法定代理人として、遺産分割協議に参加することはできません。
    こうした、利益相反関係が生じた単独で意思表示できない相続人については、特別代理人
    の選任が必要となります
   ②特別代理人は、親権者や未成年の親族や利害関係人が、未成年の子の住所地を管轄する
    家庭裁判所に選任の申し立てをすることができる
                                                

13.法定相続と遺言はどのような関係にあるか

   ①遺産承継の遺言は法定相続に優先:
    民法は、被相続人は遺言で法定相続分と異なった相続分など、遺産の分割の方法をを
    定めることができ、また、これを定めることを第三者に委託し、または相続開始の時から
    5年間を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる(民法908条)
   ②ただし、ゆいごんについては遺留分に関する制約がある(民法964条)

14.相続放棄をすることができるか

   ①相続放棄とは:相続人が相続の開始によって、相続財産に属した一切の権利・義務の承継を
    絶対的に拒絶する行為
   ②熟慮期間:相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、
    相続について単純若しくは限定の承認または放棄をしなければならない
   ③相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない
    ただし、相続の放棄は、相続開始前には認められない 

15.遺留分減殺請求はどのような時にすることができるか

   ①遺留分減殺請求権:被相続人がある相続人または受贈者に遺留分を超えて遺贈又は
    贈与した場合に、遺留分権利者の遺留分を侵害したとして、遺留分侵害者に減殺を請求して
    取り戻す権利
   ②遺留分減殺請求権の行使:遺留分侵害者に対して意思表示をすればよく、必ずしも訴訟など
    による必要はない
    但し、実務上は事後の立証のため配達証明付き内容証明郵便をもって行使すべき
   ③遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が相続の開始および減殺すべき贈与又は遺贈があった
    ことを知った時から、1年間これを行わないとき、もしくは相続開始の時から10年を経過した
    時に時効により消滅する(民法1042条)  
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16.遺産の分割方法にはどのようなものがあるか

   ①指定分割:被相続人が遺言で、遺産分割の方法を定め、または遺産分割の方法を定めることを
    第三者に委託して、その指定に従って分割すること
   ②協議分割:共同相続人が全員の協議によって遺産を分割すること
   ③審判・調停による分割:共同相続人の協議分割が調わないか、協議できないときは、
    家庭裁判所に申立をして、審判又は調停による分割を求めることができる